原美術館の「自然国家」展、オープニングに参加、刺激的です+水族館劇場、観ました!

 春愁の 人しやがみ 野は曲るなり    (高橋 睦郎)

 睦郎氏の句集『十年』から引きました。これ、「しやがみ」も「曲る」も、典拠は西脇順三郎でしょう。晩年は俳諧的な諧謔を重んじた西脇でした。西脇ワールドに春愁をとり合わせたところが、この句のお手柄。面白い一句です。

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 北品川の原美術館では、「自然国家 Dreaming of Earth Project」展が始まりました。建物の老朽化にともない、公共施設としての機能を果たせなくなり、ここは2020年末をもって美術館は閉館されます。ほんとうに残念なことです。しかしまた今回も刺激的な企画展を開催してくれました。

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 この企画展の「発案・構成」は、韓国のソウル出身の女性アーティストの崔在銀さん(韓国名はチェ・ジェウンさん)です。崔さんは生け花を学ぶために来日、草月流の勅使河原宏氏のアシスタントとして活動しました。現在は、犀利なコンセプトで勝負する現代美術家です。(日本を活動の拠点とするからでしょう、「チェ・ジェウン」ではなく「崔在銀」を名乗りますね。)

崔さんが着目したのは、朝鮮戦争の休戦後、いわゆる38度線から南北に2㎞ずつ設けられた帯状のエリア「非武装地帯(Demilitarized Zone=DMZ)」です。人の立ち入りが禁止されたこのDMZには、300万個の地雷が敷設されたいっぽうで、約65年間の自然が純粋に保持されて、106種の絶滅危惧種を含む5057種の生物の暮らす大地となっているとのこと。この豊かな生態系をいかに後世に手渡してゆくかーそれが本企画のコンセプトです。アートを通じて平和を思索しようというねらいのプロジェクトでもあるそうです。

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 一階の広いギャラリーには、崔さんの作品「DMZ(非武装地帯)の物語」が展示されています。休戦協定から現在にいたる、38度線周辺をめぐる報道資料です。

 このフロアのメインの展示は、崔さんの映像作品「hatred melts like snow」、「憎しみは雪のように溶ける」です。DMZの有刺鉄線の映像のインスタレーションですね。観者は、敷かれた鉄板を踏みながら映像に向かいます。

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 韓国人の建築家のチョウ・ミンスクさんの作品も38度線を扱っています。「DMZ 生命と知識の地下貯蔵庫」です。

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 出展しているアーティストは韓国のひと以外にも、インド人や日本人もいます。スタジオ ムンバイはインドの建築事務所ですが、今回は「Tazia」という作品、竹で構成された空間です。自然と人との共生がテーマ、竹の空間のなかに入ってみました。

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 自然と人との共生ということでは、他にもなかなか可憐な作がいくつも出ていますよ。

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 いま最後に画像で紹介したのが、釜山生れの建築家スン・ヒョサン氏の「鳥の修道院」です。鳥に象徴される生きものたちが、穏やかに暮らす修道院、というイメージがよく効いています。

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 屋外の展示もあります。前庭には、李禹煥さんの「透明茶房」、中庭には、建築家の坂(ばん)茂さんの「竹のパサージュ」です。この企画展、会期は7月28日までです。とにかく美術館の空間に身を置いてみてください。問題喚起性を持つテーマでありながら、心地よい体験が出来ます。

 もうひとつの話題です。噂の!アングラ演劇集団と言われる「水族館劇場」、その公演を初めて体験しました。舞踏の世界に通じていて、現在は鎌倉の人気立呑み店「ヒグラシ文庫」を経営する知人の中原蒼二さんが、劇団の立ち上げに関わったというので、ずっと気にかかっていた劇団ですが、ひょんなことから今回の制作を担当された村井良子さんと知り合って前売りチケットを購入した次第。会場は新宿の花園神社で、音楽はあの日本のパンクロックバンドの草分けともいえる「頭脳警察」のPANTAが担当。もうそれを聴いただけで、「観ます、観ます」でした(笑)。村井さんに思わず言ってましたね、「知ってます?「頭脳警察」ってのは、フランク・ザッパ&マザースの楽曲「WHO IS THE BRAIN-POLICE?」からとったんですよ」。はは、そんなノリで、今夜が千秋楽ですからラク前の昨夜、冷たい風の吹く花園神社に足を運びました。

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 開演は7時から、というので、6時15分ころに花園神社を訪ねます。境内に作られたテント?劇場、こんな感じです。いいですねえ、アングラ感がハンパないです(笑)。花園神社といえば、その昔、唐十郎率いる状況劇場が赤テントでの公演を行った、というので、まあアングラ演劇の聖地、でしょう。僕も学生時代に赤テントの芝居は何本も観ました。(ただ当時は対抗関係にあった佐藤信さんらの黒テント(「演劇集団68/71」)のほうに、僕はよりシンパシーがありましたが。「昭和の喜劇三部作」は大傑作でした。)ここで観たのは、『蛇姫様』だったかな、下北沢に本多劇場が出来るまえの駐車場に立った赤テントでは、『下町ホフマン』を観たのはよく覚えています。

 さあ、開演時刻となって、今回の出し物『揺れる大地』のプロローグが、これは野外で始まりました。戯曲を書いて演出を担当した桃山邑さんが現場監督のような風体で前説をやって、さあスタートです。

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 『揺れる大地』、お話しは、日帝時代の満州に日本の僻村から開拓団が送られながら悲惨な目に遭ったあの時代を背景に、なぜか現代の東京にヤマトホテルが建てられるその建築現場が舞台です。どうもストーリー自体はサッパリわけがわからないままでしたので省略ですが(笑)、劇場脇の野外でプロローグが20分ほどあって、さあそこから整理番号順に劇場の空間の入場して、そこからは座席に腰を下ろしての観劇です。

 水族館劇場、その名の通り?クライマックスには本物の?水が大量に舞台に撒かれる、というのがウリだとか。昨夜も客席の前に設けられたプールに役者が飛び込んだり、噴水シーンがあったり、最前列のお客は透明なビニールシートをかかげながらでした。いやあ、久々のアングラ芝居体験、カタルシスがありましたね(笑)。

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 劇場内は撮影禁止でしたが、上演が終わり、役者とスタッフ紹介が済んで、さあ退場というところで、舞台風景を一枚撮らせてもらいました。これくらいならアップしてもいいでしょう。どうやら来年もまた新作上演があるようですから、また観に来ましょう。

 お別れの引用句、なぜかベンヤミンの『パサージュ論』からとします。

「永遠回帰の呪縛圏のなかでの人生は、アウラ的なものから脱していない生活を可能にしてくれる。」

              (W・ベンヤミン 『パサージュ論』「倦怠、永遠回帰」より)

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