東博の東寺展、帝釈天像は見逃せませんぞ+府中市美のへそまがり日本美術、愉快でした

 
 乙鳥(つばくろ)や 小路名多き 京の町    (井上 井月)

 信州伊奈の放浪俳人・井上井月(せいげつ)は江戸末期のひと。「乞食井月」と称され、最期は路傍に野垂れ死にだったそうですが、品のある佳句をたくさん残していて、芥川龍之介がファンでした。現在、『井月句集』は岩波文庫です。燕を詠んだこの句、確かに燕の視線からは、京の町は路地が多いのは瞭然ですね。しかしこのところ、燕の姿もめっきり減りました。ほとんどお目にかかりません。

 さてもブログ記事の更新がすっかり遅れてしまいました。前回は、僕の出演した「放送大学」特別講義のご案内でしたが、無事初回のオンエアが終わり、お陰さまで好評のようです。「風狂を生きる精神~一休、蕭白からアラーキーまで」、45分のテレビ番組、BS231チャンネルで自由にご覧いただけます。二回目のオンエアは、6月5日(水)の20時15分からです。予約録画でぜひどうぞ。

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 まずこのイケメンの仏さまをご覧ください。国宝の帝釈天騎象像です。これは、3月から始まった、上野の東博で開催されている特別展「国宝・東寺~空海と仏像曼荼羅」に展示されています。京都の東寺の講堂に立体曼荼羅として安置された仏像のうち、国宝と重文の15体が、平成館のフロアに集結しています。いやこのフロアはおおいに見応えありました。粋なはからいなのは、他の仏像は撮影禁止ですが、このイケメン仏さんだけは自由に撮影できるのですね。彼の周りはぐるりとスマホやデジカメを構えた入館者であふれます。

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 密教美術ということでいえば、1999年の9月12日に放送された、当時は「新日曜美術館」の名称でしたが、NHKから「空海・密教美術の宇宙をめぐる」という番組の演出を依頼されて、四国は松山局のスタジオで編集作業にあたり、最後は渋谷の放送センターのスタジオで、ゲストのひとりに吉増剛造さんを迎えて仕上げたことがあります。あれは、NHKと四国の四つのローカル新聞社が主催して四国の四県をめぐった「空海と密教美術」展の関連番組でした。ですから、密教美術の世界はかなり勉強した次第ですが、そのときの展示は主に高野山が所有するものが中心でしたので、今回の仏様たちとはご縁のないままでした。

 しかし、どれもが国宝&重文、さすがに見事な造形です。他の主な仏像を、購入した絵葉書の接写で紹介しましょう。どうも迫力に欠けますが、あいすみません。金剛業菩薩坐像と金剛法菩薩坐像です。同じ仏師の作でしょう、よく似ていますが、結んだ印が違います。

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 それから、兜跋毘沙門天立像と、金剛夜叉明王立像、そしてこちらは重文ですが、ユーモラスな獅子です。

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 展示期間は残り少なくなりました、6月2日(日)までです。イケメンの帝釈天サンに会うだけでも値打ちはありますよ(笑)。

 もうひとつ美術展の話題を。といってもこちらは5月12日で終了してしまいましたが、府中市美術館では、「へそまがり日本美術・禅画からヘタウマまで」というタイトルで面白い展示をやっていました。10日間の連休という長すぎた今年のGWでしたが、その一日、家人ともども府中の森公園にてマーケットで買ったお弁当を食べてから、この企画展を訪ねました。

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 副題に「春の江戸絵画まつり」とあるように、主に江戸時代に描かれたコミカルで、ケッタイな絵画を中心にした展示ですが、ゲスト作家扱いで、アンリ・ルソーに、夏目漱石、小川芋銭、萬鉄五郎に、現代の湯村輝彦までが出ていました。

 しかし、なんといっても今回の主役はこのひと、三代将軍の徳川家光です。こちらも絵葉書を接写しました。

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 どうです、面白いでしょう?家光サン、主に身近なところにいる小動物を観察して描いたようですが、順に「兎図」、「木兎図」、「鳳凰図」です。このタッチは現在のプロのイラストレーターが描いたもの、と言われても、「ああそう」と信じこんでしまうくらいではありませんか。家光の息子の四代将軍の家綱も絵が好きなようで何点かありましたが、パパの家光ははるかに上をゆく技量です。

 参勤交代制度を作り、キリシタンには過酷な弾圧を行なった政治家、という印象の強い家光ですが、絵師としてなら、実に愛すべき作家でしょう。

 続いては、犬を描いた長沢蘆雪(「菊花子犬図」)と師匠の円山応挙(「時雨狗子図」)の二枚、そして仙厓義梵の「布袋図」をご覧ください。

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 というように、これは愉しい企画展でした。府中市美はこの手の催しをしばしば行ってくれますが、いやあ、イラストレーター徳川家光、大発見でした。

 お別れの引用句、ベンヤミンで行きましょう。

「夢中になったあまり思わず徹夜になってしまったといったことが一度もない作品を、完璧などとは、ゆめにも考えてはならぬ。」

              (ヴァルター・ベンヤミン 『一方通行路』 )

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