DIC川村記念美術館では画家の彫刻展OP+恵比寿のMA2では手塚愛子展とシス書店は赤木仁展です


 鳴く蟲の ただしく置ける 間(ま)なりけり    (久保田 万太郎)

 9月も半ばとなり、夜に外に出ると、秋の虫の声が大きくなりました。万太郎、本職は劇作家で演出家。ですから、虫の声だって間を測って聴いていますね(笑)、さすが。さあやっと涼しくなってくれるでしょうか。

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 千葉県の佐倉市にあるDIC川村記念美術館、この秋は「描く、そして現れる――画家が彫刻を作るとき」という企画展が開催されます。9月13日にはオープニングがあってご招待ありがたく、参上してきました。ひらたく言えば「画家の彫刻展」ということでしょうが、ちょうど10月5日から愛媛県の町立久万美術館に巡回する(前は足利市美でした)「空間に線を引く――彫刻とデッサン展」が彫刻家のドローイング展、ということでは裏腹?の企画ですね。(久万には僕は6日に訪ねてきます。毎年恒例の久万訪問ですが。)ただこちらのほうは、企画を担当された旧知の光田由里さんの開会式のご挨拶によると、作品生成の原理?によりつっこんだ問題意識から導かれた企画のようです。画家の彫刻はイメージを実体化しようとして絵画思考を新たに触発する契機にもなるのでは、とか。なるほど、デュシャンとか高松次郎とかサイ・トゥオンブリーといった曲者(だから刺激的な存在なのです)の作も出展されていますね。

 開会式の後の14時から、光田さんによるギャラリートークにしばしお付き合いしました。撮影許可を頂戴しましたので、現場レポートです。

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 岡本太郎の絵画作品「エクセホモ」の前での光田さんの作品解説が始まりました。展覧会図録にも光田さんによる啓発的な解説が載りますが、「これまでと違う新しい絵」のために画家は彫刻を必要としたのではないか、確かにそうですね。ですから、この美術館に自画像が展示されるレンブラントなら、彫刻に向かう必然性はなかった、と仰るのもよくわかります。

 最初のブースには、マグリットが同一モチーフで制作した絵画と立体や、パブロ・ピカソ、ジョアン・ミロなどの作品が展示されています。デュシャンとリチャード・ハミルトンの共作である「眼科医の証人」と「濾過器」が出ていますが、ここにデュシャンが登場することについては、光田さんの犀利な分析を引きましょう。「彫刻を吊り、絵を立てて置くデュシャンは、彫刻的でない彫刻、油彩画とは別の絵を提案して、絵と絵でないものを架橋し続ける。」そう、絵の支持体にガラスを選んだ、というところも、彫刻性の導入?といえるかも、です。

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 次のブース、僕が気になったのは高松次郎の世界です。新潮社から刊行されたミシェル・フーコーの『言葉と物』の装幀を高松氏が手掛けていますが、あの装幀(函のデザイン)も傑作でした。ともあれ、影と遠近法の問題に強い関心を持ち続けた彼など、平面と立体に絡んだ造形思考の専門家といえますから、今回の企画にはぜひ参加してもらわねば。光田さんの解説は、その高松の「布の弛み」の前でです。

 草間彌生、ジム・ダイン、ソル・ルウィットと紹介しましょう。

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中西夏之さんが版画家の五十嵐英之さんと組んで制作した、「「遠くの画布 近くの絵」像の拡大と拡散の試み」、これは詳しい説明は省きますが(笑)、平面画像の立体化?に挑戦した、象徴的な作品でしょう。

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 ここは、晩年の中西さんが厚い信頼を置いていた美術史家の林道郎さんの解説がぜひ欲しいところですね。

 今回のチラシやポスターに使われたのが、この館内に常設されたサイ・トゥオンブリ―です。昔、『彼自身によるロラン・バルト』のなかの「好きなもの」「好きでないもの」を挙げた断章で、「好きなもの」としてトゥオンブリ―という不思議な名前が出てきたのが僕が存在を知ったきっかけでしたが(「好きでないもの」にミロが挙がってました。まあわかる、気もします(笑))、ずっとファンで作品集も購入しています。原美術展の回顧展は嬉しかったし、ここ川村では、2016年の春に「トゥオンブリ―の写真――変奏のリリシズム」展があって、そのオープニングの模様は、前のブログ「饒舌三昧」でレポートしています。「子どもの落書きのような」とよく形容されるドローイングの世界にいわば拮抗するかのように、トゥオンブリ―の彫刻の世界もまた重要でしょう。

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 ここに触れられなかった作家もたくさんいます。現代アートファンなら必見の企画展でしょう。先日の台風15号が千葉県にもたらした災厄は甚大なもので、なおも復興中ですが、美術館を囲む緑地の樹々もなぎ倒されたものの多く、ここも被災地でした。帰りの送迎バスの窓からは、こちらは幸い農作物被害はないようで、収穫を待つ稲穂が見えていました。

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 現代アートの世界、もう少しお付き合いください。恵比寿のMA2ギャラリーでは、9月28日まで手塚愛子さんの個展「Flowery Obscurity華の闇」展が開かれています。手塚さんは絵画制作の過程で織物に注目し、その解体と再構築を独自の手法として、一種のコンセプチュアルアート作品を創っています。MA2のフロアに新作が展示されています。

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 これはレンブラントの「夜警」がモチーフですね。「華の闇(夜警)」、大作です。二階フロアにはこういう作品も出ています。

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 「令和」の新元号が編み込まれていますから、最新作でしょう。それからこちらは、「薩摩ボタン」を素材とした力作です。

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 さてここで、去年の11月にここMA2ギャラリーであった手塚さんを含む同世代の女性の現代アーティスト三人展の画像をちょっと紹介させてください。三人とは、他に小瀬村真美さんと関根直子さんです。ちょうど僕が出演した「放送大学」特別講義の「風狂を生きる精神~一休、蕭白からアラーキーまで」で、曾我蕭白の絵を松阪に訪ねるパートで共演を願ったのが、小瀬村真美さんだったので、この展示にも誘っていただきました。ちょうど三人のトークも、MOT学芸員の西川美穂子さんの司会で行われたのです。僕はそれをデジカメ取材しました。しかしちょうどその後に、前のブログ「饒舌三昧」(これは「新饒舌三昧」です)が、画像掲載の容量オーヴァーで閉鎖をせざるをえなくなり、こちらを立ち上げるにもなにやかや時間がかかったため、とうとうわがブログに紹介する機会を逸したままでした。

 せっかくですから、改めまして。トーク、左から順に、手塚さん、小瀬村さん、関根さんです。トークの内容は当然憶えておりませんが、和気藹々の感じをお伝えします。そして、小瀬村さん、関根さんの展示された作品もどうぞ。

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 恵比寿まで来ていますから、もう一軒、ギャラリーへご案内します。JRの駅にほど近いシス書店LIBRAIRIE6です。ここでは、赤木仁さんの「福地の獣」展をやっています。今月22日まで。なんとも不思議な霊獣の世界ですね。主に多頭鹿が主人公。

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 なんでも石川県の田舎の鉱山跡で過ごした少年時代の経験がベースにあるのだとか。野生の鹿がやってきて、それこそ霊的な交流でも持ったのでしょうか。シス書店、ここはシュルレアリスム精神を体現したアーティストだけを採りあげますから、赤木仁の世界もそこに通底するでしょう。さらにどうぞ。ユニークなオブジェもありました。

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 お別れの引用句、川村記念美術館の展覧会図録にあったデュシャンの言葉を引きましょう。

「それは、三次元に彫刻のように設置されなければならないだろう。」

                   (マルセル・デュシャン)

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